2018年12月29日土曜日

乳腺炎とキャベツ湿布とリステリア菌感染

いよいよ、2018年ともお別れする時が近づいてまいりました。
「今年も一年、早かったなー!!」と年々、強く思うようになっております、年のせい?^_^;

ところで、今までの人生で一番、鮮明に記憶しているのが、子どもが産まれてからの一年間です。
あっという間だったけれど、悩んだり不安に思ったり、それはそれは濃密な時間でした。

せっかくだから子育て楽しんで!って言われたけれど、そんな余裕はなかったですよね…
でも振り返ると、赤ちゃんとの蜜月だったなあ~もう一度体験したいと、今なら思えます。

さて、年末の12月、当室にお越しいただいた新患のお母さま、ほとんどご紹介の方でした。口コミありがとうございます。

初めての場所で、初めての人に会う、というのは、私自身はとっても勇気がいります。
そんな勇気をもって来て下さった方のためになるように努めていきたいと思います。

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話かわりまして、最近の乳腺炎に関するトピックの一つが、
乳腺炎にキャベツ湿布はリステリア感染の危険性がある、というお話。
7年ほど前に、男性医師のブログを目にしてから、多方面に伝わっていったように思います。
当室に来られているお母様複数名からも、リステリア菌感染について質問されました。


昔、自分が乳腺炎になって母乳相談室に行ったとき、勧められたのが「ジャガイモ湿布」。
「え?なぜ?」って驚きました。

「この現代に、おばあちゃんの知恵袋?」
「かぶれたらどうするの…」

乳房手技の効果は実感しておりましたので、それで快方に向かっているからと…
すみません、やりませんでした、ジャガイモ湿布。

しかしその後、特に小鳥の病などに自然療法は効果あり、を実感することが増え、私の自然主義アレルギー?は無くなりました。

桶谷式の学校でも、自然も最先端も、の折衷派の先生がいる一方、
科学的根拠の無いものは使わない、薬剤と原因菌の同定と保冷剤と手技のみ、という先生がいました。
いろいろな見解を学べてありがたかったです。

また、キャベツよりも「ユキノシタ」という植物の葉に効果を感じている諸先輩が多く、この葉は抗菌作用等があり古来から漢方的な使い方がされてきたそうです。
熱湯にくぐらせて葉の薄皮をはがして貼用します。


キャベツの乳腺炎への貼用も、世界中で行なわれており、ドイツのお母さんはスリコギで叩いて、薬効成分を外に出して貼るそうです。

先日、ドイツより里帰り出産のお母さんから、ドイツでは自然療法が広く一般的、というお話をうかがいました。

私も、小鳥のために(小鳥専用に症状別の様々なハーブ薬があるのです。小鳥に効きます)ドイツから取り寄せています。
小さく弱い肝臓に、ヒトと同じ化学製剤を使って亡くした経験からです。


リステリア菌の感染は、特に注意が必要なのは妊婦さんや免疫低下の方などです。

厚生労働省のサイトより
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html

リステリア菌を避けようと思ったら、生野菜や果物、肉、アイスクリーム、チーズなど避けなければならず、大変かな、と思います。

以下の文献では、条件によっては熱にすら耐性をもつようです。
http://jfoodprotection.org/doi/pdf/10.4315/0362-028X-59.5.465
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfm/32/1/32_1/_pdf


海外でキャベツのコールスローサラダから感染例はありますが、
私自身は、今後も生のキャベツは食べていきます。

万が一、が無いわけではないけれど、そこまで用心すべき万が一、ではないと思うからです。

人生で一度もリステリア菌感染者にお会いしたり、誰かが感染した、という噂も耳にしたことがありません。
かといって、今後発生しえないわけではなく、

すべてのリスクを避けたい方は、生キャベツを貼ることは避けた方がよいでしょう。


ところで乳腺炎へのキャベツ葉の貼付は、冷却効果を得るためだけのものなのでしょうか。
乳腺炎に対し、冷却し続けるのは良い結果をもたらすのかな?という疑問も常々感じます。
個人的には、違う意図で使っているのだと思っておりました。

と言いますのも、私からは勧めておりませんが、当室に来られた1名の皮膚科医のお母さんと、現在もお2人目で来られている皮膚科医のお母さん1名が共に、乳腺炎の痛みと腫れに、鎮痛剤の薬効が切れた時、キャベツ湿布に助けられた、とおっしゃっていたからです。
たった2名の医師の言葉を信じるのは、もちろん禁物ですが。


たとえば、下記のような研究文献があります。
変形性膝関節症での使用例です。

通常のケア群と、キャベツ葉ラップ群で、有意にキャベツ群に炎症と疼痛などに効果があったとされています。

かと言って、早計にキャベツ湿布を勧めているわけではありません。
乳腺炎に対して、保冷剤もキャベツも緩和作用はあるかもしれませんが、治療効果があるとは、現時点では思えません。

いわゆる民間療法は、そのほとんどに科学的根拠が無い、と言われています。
安易に用いるのはどうかしら、と思います。

しかし、かつての私のように「よろしくない」という思い込みもまた、非科学的ではないかとも思います。
あやしい、と思う直感ではなく、多方面からの科学的な検証を続けていく価値があるかもしれない、という考え方を持ち続けたいと思っています。

脳神経外科医の上山先生が、科学的に解明されていることは氷山の一角のみ、とおっしゃっていましたが(エビデンスのみに頼るのは危険、というお話の流れで)、
解明されていない事象に、人類に貢献しうるお宝がたくさん埋もれているとしたら、科学的根拠が無い、と全否定はもったいないのかもしれませんよね。

以前、東京に住んでいた頃、狭い軒先にアロエの鉢を置いている家をよく見かけました。
アロエを傷に使ったりするのも、今では非科学的なのでしょうね。

個人的な話ですが、病院で処方された湿布薬でよくある副作用、軽度の光線過敏症を発症してしまい、今でも海水浴後等はしばらく蕁麻疹様に悩まされるため、薬剤=善、自然療法=悪、の構図に少し考えてしまいます。

しかし、たった数分で上記および以下のような研究論文などがざざっと出てくるのですが。(すみません、時間無く根詰めて調べてないです) 

国際的な母乳育児支援団体ラ・レーチェ・リーグのサイトでの紹介
乳房うっ滞(緊満・うつ乳)に対し、キャベツ葉を優しくもみしだいてから使う事、とあります。
  
うっ滞に対し、キャベツ葉によって、硬さと痛みの軽減があり、授乳期間を延長させたが、検証が必要な研究。

キャベツ抽出物入りクリーム群とプラセボ群で効果に差はなく、授乳行為の方が効果が高かった。←そう思います

イギリスの国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence (NICE) )には、下記のような文献も…
https://www.nice.org.uk/guidance/cg37/evidence/full-guideline-485782237

WHO(世界保健機関)の『乳腺炎の手引き(原因と対処法)』にも、「症状の治療法」の項目に、
鎮痛にはイブプロフェン(販売名「イブ」です)、赤ちゃんと一緒に頻回授乳して休むこと、患部の温パック(冷却ではありません)。

そして以下は科学的根拠がはっきりしていない、としつつ、
膿を外科的に除去すること(ばい菌が陽性だったのはわずかだったそうです…)。
キャベツの葉っぱが、乳房うったいに時に推奨されている。悪化の時間を短くさせる根拠は無いが。
食事療法。コーヒーのメチルキサンチン(カフェインなどのアルカロイド)等を避ける。数名の研究者により、脂肪の摂取量を減らすことが有益と指摘されている。
ハーブ療法。東洋医学の植物抽出物(蔵王嘉)は明らかに効果がある。
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/66230/WHO_FCH_CAH_00.13_eng.pdf

  
そして、コクラン・ライブラリー(コクラン共同計画)(2016年)
上記のような複数の研究を検証した結果、乳房うっ滞に対し、キャベツ葉については有望な可能性はありえるが、キャベツ葉を含む、すべての方法が科学的根拠は不十分。

そして最新研究
乳房うっ滞に対し、キャベツ葉と保冷剤を比較して、キャベツ葉の方が母親の満足度が高く、効果があった。
2017年の研究)

 ↑ 私の誤訳などありましたらご指摘下さいませ。 




円山の雪化粧、きれいですね。寒さも忘れ見とれてしまいました!